テレビを捨てて本を読もう

ただの本の感想、紹介、アウトプット用のブログです

【感想・紹介】最近読んだKindle日替わりセール本まとめ/宗教・歴史・心理学・生物

Amazon Kindleは良い。
数千冊の本を保存できる書庫を携帯して持ち歩けると思うだけでこれほどコスパの良い買い物はここ数年他にないかもしれない。
何年も使っていると使い勝手の悪さを感じる部分もあったり、読みたいと思った本がKindleでは扱ってなかったりとかはあるが、紙の本じゃ見辛い文庫本の文字のサイズを大きくしたりとか、自分がマーカー引いたところの見返しやすさとか、もう紙の本に戻れないと思うところもある。

まあ色々なメリットデメリットあるAmazon kindleだが、その諸刃の剣の一つがkindle日替わりセールだ。
質の高い本が本屋の半額むしろそれ以下で買うことが出来たりする。
しかし半額になっているのをいいことに、積読本が溜まっているにも関わらず気になった本があるとついつい買ってしまうのである。
本屋で実物の本を見ているとなんだかんだ迷ったあげく買わなかったりすると、オンライン上だとこうして日々日替わりセールをチェックしていると、いつの間にか処理し切れないくらいついつい本を買い込んでしまっていたりする。

 

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  • 発売日: 2019/07/24
  • メディア: エレクトロニクス
 

 とまあ気づいたら結構積読本が溜まってしまっていたので、いつもは一冊ずつレビューしているのだが、これはいかんと何冊かまとめて一気読みしてしまったので、ざっと紹介させていただくこととする。

 

 

1.仁義なきキリスト教

仁義なきキリスト教史 (ちくま文庫)

仁義なきキリスト教史 (ちくま文庫)

 

 海外文学を読んでいるとキリスト教についての予備知識が必要かなと感じてきていたところ、丁度こちらが日替わりセールに上がっていたのでついポチってしまった。
キリスト教は高校の時世界史でざっと習いはしたが、正直もうカトリックプロテスタントもよく分からなくなってきたし、他にもエホバやらモルモン教やらロシア正教やら派生してて意味が分からないので、とりあえず大まかな概要を復習しようと思った次第である。

本書はキリスト教の成り立ちと発展、歴史的に重要な転換点などを、なぜか広島弁のヤクザ風テイストに置き換えたパロディ小説である。
なぜこの設定にしたのか、何故広島弁なのか、イエスなどの登場人物が「はだ○のゲン」のキャラクターにしか見えなくなってくるが、確かに教科書を読んでいるよりも頭に入ってきやすく面白い。

そもそも聖書自体がテキストの寄せ集めであるし、何しろ二千年も前のことなので本当のところな何が真実かというのなんて分かりかねるわけだ。よって本書に書かれていることも多少脚色をまじえてエンタメ風に仕立ててある。

とはいえ実際キリスト教という宗教が利権争いや血生臭い歴史の上に成り立っていることは事実であるし、正直ヤクザの方がまだかわいいと言わざるを得ないような気にすらなってくる。
クリスチャンの方々に聞かれると怒られそうだが、このような宗教が世界第一位の信者数を誇るということには恐ろしさすら感じる。

ただ宗教というのはやはり信者が増えてくるとおかしなことになってしまうというのはどんな宗教でも似たようなところはあるのかもしれない。

エホバとかモルモン教とかそういったところには触れられていないが、キリスト教の概要については知るには読みやすくおすすめの書といえる。

 

2.はじめて読む人のローマ史1200年

 

はじめて読む人のローマ史1200年(祥伝社新書)

はじめて読む人のローマ史1200年(祥伝社新書)

  • 作者:本村 凌二
  • 発売日: 2014/06/02
  • メディア: 新書
 

 キリスト教の歴史と関連して、ローマ史の本が半額セールに出てたのでこれも買い。
ローマ時代というと映画でよく取り上げられるテーマでもあるし、歴史の中ではかなりポピュラーな部分だとは思うんだけど、世界史ではなく日本史をメインで専攻していたので恥ずかしながらローマのことはほとんど知らず。
紀元前の頃の話なんて疫病や飢饉が流行してたりとか、貴族は腐敗して民衆が虐げられたりとか、奴隷は闘技場で死ぬまで戦わされたりとか、漠然とゲームオブスローンズのような殺伐したイメージしか持っていなかったのだが、本書はこれまでの読んで自分の無知を恥じさせてくれた。

というか当たり前のように教科書で歴史の授業を受けてきたけど、二千年前なんて自分的にとっては気が遠くなりそうな昔の話が、現代にも残っているって凄いことだと、今更ながら月並みなことを感じてしまった。

これを読んで思うのは、2000年も前の時代なんて科学も医療も産業も、もちろん今とは比べ物にならないが、むしろ精神性では現代よりもこの時代の方がよほど高かったのではないかということ。というかやはり科学技術の発達と人間の精神性というのは反比例しているようにさえ思える。

ローマ時代に限った話ではないが、死が身近なものであると、それだけ名誉や公益のためといった自分の死後も残るものに価値を見出すのだろう。
政治の在り方、リーダーとしての在り方など現代人こそローマ時代の英雄たちから学ぶべき点は多いように思う。

また、歴史の勉強というとどうしても何年に誰が何をした、とか歴史を点で捉えがちなのだが、点ではなく一つの大きな流れとして捉えること。
歴史が得意な人からすると当たり前なのかもしれないが学生の頃にこういう本を読んでおけばよかった。

ローマの滅亡をいつこの時、という見方をするのではなく、ローマの滅亡は緩やかな老衰であり、新しい時代の始まりでもある。
今の時代も建前は平和で満たされた世の中ではあるが、長い目で見るとアメリカの覇権も日本の安全も、いつまで続くかなんて分かったものではないというのがよく分かる。

 

3.皮膚という「脳」

 

皮膚という「脳」 心をあやつる神秘の機能

皮膚という「脳」 心をあやつる神秘の機能

 

 「考えるな、感じろ」という有名な映画の台詞があるが、肌で感じることの重要性を
再認識させられた一冊。
様々なものがバーチャル化していく昨今、リアルな体験、触れ合いが大切だというのは皆さんももう耳にタコな話かと思うが、本書の興味深いところは、科学的、心理学的な側面から皮膚の仕組みについて考察し、さらには社会学的にも皮膚の役割について踏み込んでいるところである。

腸が第二の脳というのはよく聞く話だが、皮膚を脳とするタイトルは中々斬新だと思った。ハグをしたら親近感が増すとか、マッサージをしてもらうとストレスが減少するとか、まあ当たり前といえば当たり前なのだが、皮膚の触れ合いの原理など普段特に意識することもないだけに、学術的な論文などを持って来れられて解説されるとなるほどと思う。

また著者は「皮膚」を人体最大の臓器と捉え、皮膚自体が脳を介さずに様々な情報を処理してるのではないかと考察している。厳密には学術的に解明されていない論説であり、あくまで著者の仮説の範囲内であるが、皮膚の接触がストレスの軽減や人格の形成に重要なことは明らかであり、コロナの影響で人との触れ合いが制限される今だからこそ、よりタイムリーに皮膚の触れ合いがどれだけ大切かということが身に染みた。

肌には多くの善玉細菌が住んでおり、免疫として病原菌などから身を守ってくれているが、除菌によってそのような善玉細菌まで一緒くたに死滅させてしまう。
身の回りの人との触れ合いを制限され、過剰に清潔感を保たなければならない今の子供たちは将来何か影響が出るのではないかと危機感すら感じる。

コロナ禍というこの時期だからこそ読んで欲しい一冊だと思った。

 

4.生き物の死にざま

 

生き物の死にざま

生き物の死にざま

 

 

夏頃本屋にも平積みされていて気になっていたが、日替わりセールで売り出されているのを見てラッキーと思ってポチってしまった。
聞いたことのないような珍しい生物から身近な哺乳類まで、様々な生き物の生と死についてエッセイ風に書かれており、いわゆるポエムのようでもあるが、これが前評判と違わず結構感動してしまった。

長い長い旅を経て故郷の川に戻ってきてもダムが作られたりして産卵を果たせない鮭の話とか、甲斐甲斐しく卵の世話をし、孵化を見届けて死んでいく昆虫の話など、魚や虫にそこまでの情緒的感情はないだろうとは思っていても、読んでいると不覚にもグッとくるものがある。

人間による環境破壊が生き物の生と死の循環を乱していることは嘆かわしいことだと思うし、保全されるべきだとは思うのだが、一方でどれだけ人間が真面目になって環境保護に取り組んだとしても、地殻変動や隕石の衝突などが起これば多くの生き物は一瞬にして絶滅してしまうこともあるだろう。

本書にもあるように生物が遥かな長い歴史を経て現在のように進化してきたとするなら、結局は人間の活動も自然の循環の一部であり、その過程で他の生物を淘汰してしまうのもまた必然ともいえるのかもしれない。

現代において人間の活動で自然の循環にミスマッチが起こり、色々と問題を引き起こしているのも、遠い未来地球も太陽にのまれて無くなってしまうのなら、宇宙にまで到達新たな進化を遂げるためのステップと言えるのかもしれないとか、色々妄想した。

また、本書で様々な生き物の生と死を見て、自分は人間に生まれていてよかったと思うのか、それとも本当に人間は幸せなのかということも考えざるを得なかった。
食物連鎖の頂点に立っており、生き物の中でも最高の知能を持った人間は、今の時代普通に生きていれば他の生き物から捕食される心配もなければ、様々な娯楽を楽しんだり幸福を感じることが出来る。

野生に生きる多くの生き物は天寿を全うする前に他の生き物に捕食されたり、交尾を終えると死んでしまったり、人間という生を享受していると他の生き物が悲惨にも思えてくるが、人間のように複雑すぎる知性を持っているのもそれは良いことだけなのかと思ってしまう。

確かに人間は外敵に脅かされることもなければ食べ物に困るも早々ないだろうが、生まれた環境や時代によっても幸福度は大きく左右される。
幸せかどうかなんてその人の考え方次第と言われればそれまでだが、実際そう割り切って達観して考えられる人ばかりではないだろう。
現代の北欧諸国あたりに生まれることが出来ればまあまあ幸福度は高そうだが、日本含む東アジアは宗教的な思想などもあってあまり幸福を感じられない民族らしい。紛争地帯や途上国の貧民街などに生まれたら命の危険や飢餓にも苦しまなければならないかもしれない。

同じ日本にあっても周囲と自分を比較し合って一喜一憂し、色々と神経をすり減らすことも多い中、果たしてどれだけの人が自分が幸せだと胸を張って言えるのだろうかなどと考えてしまった。

ミツバチが一生で取れる蜂蜜はスプーン一杯程度と悲しくなるようなエピソードも紹介されているが、それを皮肉るように日本の平均的サラリーマンが一生で稼ぐお金も、所詮はデスクの上におけてしまうくらいのものだという対比を見て、人間の一生というのも儚いものなのかなと感傷的になる。

人間には人間ならではの楽しみは幸せも多くあるが、他の生き物のように、食うか食われるか、交尾して産んで死んで、また新たな命が生まれて、というそんなシンプルなあり方もいいんじゃないかと思った。