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【感想・紹介】最高の体調/原始時代から読み解くパフォーマンスの上げ方

皆さん体調には気を遣われていますでしょうか?
何気なく普段から体調が良いとか悪いとか言いますけど、体調というのは非常に重要なことです。
体調が良いと頭が冴えて仕事の能率も上がる気がするし、悪いと頭に靄がかかったようで何事も捗らない・・・と誰にでも経験があることではないかと思います。今回読んだのは鈴木祐さんの「最高の体調」では、その体調について、どうすればより健康的で能率よく仕事をこなせる体になれるか、果ては人生の幸福を高められるかということについて、様々な研究をベースにした具体的で実践的な方法が数多く提示されています。


前々から気になっていたんですがAmazon kindleのPrime Readingで読むことが出来たのでこの機会に読みました。
今はPrime Readingから外れてしまっているようですが、Amazonでプライム会員になっているとたまにこういう掘り出しものが上がってくるから結構おすすめですね。

 

最高の体調 ACTIVE HEALTH

最高の体調 ACTIVE HEALTH

 

 

本書で言われてることは仕事のストレスや生活の乱れから来るパフォーマンスの低下を改善し、健康に楽しく生きよう、ってことなんですが、実際のところ要点は色んな本やネット記事でも既に言われ尽くされて皆知っているであろうことです。
デジタルデバイスを使いすぎないようにしよう、運動をしよう、健康的な食事をしよう、友人を持とう、質の良い睡眠を取ろう、自然と触れ合おう、人生の価値観を定めようといったことが主な柱です。

 

上で挙げたようなことが良いというのは分かっているけど、なぜそれが必要なの?じゃあ実際具体的にどうすればいいのか?
何を食べればよくてどういう効果があるのか、人間関係を良くするにはどうすればいいのか、自然と触れ合うといっても何をすればいいのか、目標を立てるといってもどうすればいいのか、といった実践方法について、どういう方法で、どのくらいの時間やればよくて、どの程度の効果あるのか、といったことが数字で具体的に示されていることが本書の特徴です。

従来の自己啓発とかビジネス本といえば著者の実体験とか考えによるものが主流でしたが、最近は学術的根拠のあるものや科学的アプローチに基づいたものがトレンドなのですかね、こうやって権威ある論文に基づいた切り口から展開されると、斬新で説得力のあるように感じられて「よし、やろう」という気になってきます。
Youtube界隈でもメンタリストDaiGoさんとかを筆頭にこういうのが流行っていますね。

 

勿論論文のデータが絶対というわけではなく、適したやり方というのは人それぞれだと思いますが、こうやって数字として実際に提示されると分かりやすいし、一つのテーマの中でも色々な実践方法があるので、まずはとっつきやすいものからやってみるのも良いと思います。

 

本書は8章から成っていて、

  1. 文明病
  2. 炎症と不安
  3. 環境
  4. ストレス
  5. 価値
  6. 遊び

 とそれぞれのテーマに沿って展開されています。

 

テーマ広いため浅く広くともいえるのですが、健康法から運動、マインドフルネス、価値観の定め方、哲学的内容など、私たちの悩みのおおよその範囲はこの一冊でカバーしています。聞いたことのないメソッドや知識もたくさんあって、とても全部は紹介しきれないんですが、まず本書で提示されていることは、現代の便利すぎる生活と私たちの遺伝子はミスマッチだということです。
現代社会の生活習慣病うつ病、といった文明病はそのミスマッチから発生しているものであり、それを多面的な方向から改善する方法を教えてくれるのが本書です。


私たちが農耕を始めて定住をするようになったのはせいぜい1万年~2万年前、それ以前何百年間も狩猟生活をしてきた人類の歴史からいうとつい最近の出来事です。

まして電気を使えるようになって、いつでもどこでも誰とでも連絡できて、特に日本は24時間コンビニに行けば好きな食べ物がいつでも手に入る、なんていう今の生活は数百年間の人類の歴史の中で培われた人間のDNAと全く適合していません。


今まで人類の長い歴史の中で存在しなかった化学添加物の入った食べ物ばかり食べて、デジタルデバイスに囲まれた生活をしていると、そりゃ色んなところがおかしくなるわ、ってのも頷けますね。

 

 私たちが悩む人間関係からくるストレスも、生活の悪習慣からくる病気も、脳を蝕む情報過多も原始時代にはなく、原始人たちはその日のことを心配していればよかった、獲物を採って食料を確保すればあとは仲間と歌って踊ったり、大自然の中で遊んだり陽が沈んだら眠って、というとなんだか原始時代に戻りたくなるような気もします。

 

もちろん現代社会には原始時代では絶対味わえなかったような娯楽も幸せもあるし、原始時代のように猛獣や原因不明の疫病や飢餓に怯える必要もないし(疫病はまさに今流行ってるし、飢餓になることもあるかもしれませんが)、どちらが幸せかなんて言えることではないですが、あくまで現代の利便性も享受しつつ、出来るだけ遺伝子にマッチした生活をする、といういいとこ取りをしていければと思います。

 

この人類の進化論と最新医学を融合した学問のことを、進化論の父ダーウィンからとって「ダーウィニアンメディスン」というそうです。

 

食事や運動、自然との触れ合いのメリットはこの著者の「超ストレス解消法」という本にも詳しく書かれています。こちらもまたいずれ感想を書こうと思います。

 

 それでは本書の中で印象に残った点をいくつか。

  • デジタルデバイスが近くにあるだけで、認知機能が大きく低下。デバイスの存在を近くに感じただけで目の前の作業にリソースは減ってしまう。
  • 現代人のパフォーマンス低下の原因は炎症
  • 内臓脂肪が減らない限り体は炎症し続ける。
  • 平均睡眠時間が1日7~9時間の範囲を逸脱すると体内の炎症レベルが激増
  • 総摂取カロリーのほんの1%をトランス脂肪酸に入れ替えただけで悪玉コレステロールの数値が激増
  • 孤独感はタバコや肥満と同じくらい全身に炎症を起こし、早死にリスクを高める
  • 不安の機能はアラーム
  • 不安なコメントの悪影響を1つ打ち消すためには、ポジティブなコメントが6つは必要
  • 腸内細菌の重要性。腸の細胞に細かい穴が開いてしまう現象を「リーキーガット」という
  • リーキーガットはアレルギーや認知機能低下など様々な症状を起こすが、中でも重要なのは「疲れやすさ」
  • 腸内細菌を増やすには発酵食品や乳酸菌を含んだヨーグルトなど、「プロバイオティクス」というサプリもいい
  • プロバイオティクスはアレルギー症状の改善にも効果があり、8週間服用したグループは目のかゆみと鼻水の量が減った
  • また4週間飲んだグループは攻撃的な思考が減り、落ち込んでからも早く立ち直ることができた
  • 抗生物質は腸内細菌を大量に殺し、たった一回の使用で3分の1が死に、半年でもダメージが回復しなかった
  • 抗菌グッズや薬用ソープは肌の有益なバクテリアを殺す
  • 住む環境や食事を変えれば、私たちの腸内は3日でも多様性を取り戻す
  • グーグルの研究で、スナック置き場に近いドリンクバーを使った者は、遠いドリンクバーを使った者に比べて、お菓子を食べる量が69%高かった。これは環境が人に及ぼす影響の大きさを示している。
  • 孤独だった人に友達ができた場合は最大で15年も寿命が延びる傾向があった。
  • ”偽物の自然”にもリラックス効果があり、公園の写真をみた被験者は一般的な都市の光景を眺めた被験者より2倍副交感神経が活性化し、心拍数も有意に低下していた。
  • うつ病の場合は、週に1回30分ほど自然の中にいれば、自然との触れ合いがない人に比べて発症リスクが37%も低下する。高血圧の場合は、週に1回30分のラインを超えたあたりから症状が改善していく。
  • 公園や森林は、空気中に有用な微生物が漂っており、腸内フローラの改善にも重要な役割を果たす。
  • 元々私たちの脳は見知らぬ人とうまく人間関係を作れるよう設計されていない。
    ヒトの認知リソースは一回につき5人前後としか親密な人間関係を築けない。
  • ストレスを感じた時の対処法として「リアプレイザル」というものがある。
    スピーチの前など緊張してきたりストレス反応が起き始めたら「楽しくなってきたぞ!」「興奮してきたぞ!」など自分に言い聞かせるだけ。
  • 一回40分の昼寝でパフォーマンスが34%改善し、注意力は100%の完全回復。
  • 1回45分の少しキツい運動を週に2回のペースで行うのが、脳機能アップが見込める最低のライン。ストレス対策だけならウォーキング程度でも効果大。
  • 性欲障害の患者がしばらくポルノ視聴を止めたところ、興奮状態だった神経ネットワークが徐々に弱まり、元の状態を取り戻せた。
  • 現代の価値観の多様化が、私たちの未来像をぼんやりしたものにしてしまう。現代人が持つ漠然とした未来への不安を解消するためには、「未来を今に近づける」。
  • 未来との心理的距離を測る、「自己連続性」が高い人ほど不安に強く、セルフコントロール能力も高い。貯金額も25%も高い。
  • 自己連続性を高めるには自分にとっての「人生の価値」を定めること。
    自分の価値観に従って毎日を暮らす人ほど年収と貯金額が多く、「人生の価値」の強さが標準偏差から1つ高くなるごとに、貯金額は244万ずつ増えていた。
  • 「目標」は未来に達成すべきゴールのことであり、いったんクリアすればそこで終わり。成功することがあれば、失敗することもある。しかし、価値はつねに現在のプロセスなので、どこまでいっても終わりはなく、成功も失敗も存在しない。
  • 人生の幸福度を高めるものとして特に大きいのは「貢献」
  • 人間は無意識に死への恐怖を感じており、私たちが選ぶ行動の多くは、その恐怖を解消するために行われる、という「脅威管理理論」
  • 死への不安へのもっとも有効な解決策は原始仏教で、「ブッダ」が提唱した「すべての欲望はフィクションだと気づきなさい」というもの。
  • 自分の理解を超えた存在に「畏敬の念」を体験した多い被験者ほど、心理的な不安や体内の炎症レベルが低かった。
  • 畏敬の念を起こす3つの要素は「自然」「アート」「人」。理由は分からないがなぜか惹かれるもの、を基準に接してみる。
  • 1日に30~40分の瞑想を8週間ほど続ければ、薬物治療と同じレベルで不安と鬱を和らげる。
  • マインドフルネスとは、スピリチュアルや宗教的な至高体験でもない、ごく日常的な意識のあり方。むやみに瞑想に打ち込む前に、まずはマインドフルネスの感覚を掴む。
  • 人間の幸福度は遊び心と大いに相関関係がある。
    現代の遊び心を発揮しにくい環境においては、ルール作りが役に立つ。
  • ルール化に役立つものとして「if-then(イフゼン)プラン」や「メタ認知」がある。

 

ざっと挙げてみましたが、この本を読んで思ったのは、今まで色んなビジネス書や自己啓発書で言われてきたような、自分の価値観を設定することの大切さや、環境を変えることの重要性が、最新の研究によっても裏付けられているってことですかね。

 

もちろん全部が全部当てはまるわけでは無いと思いますが、おおよそ昔から本で言われてきたようなことは間違いじゃなく、自分にルールを設定して、自然との触れ合いを大事にして規則正しく生活する、という当たり前のようなことがすごく重要なんだと思った次第です。